"二 本件記事の著作物性について
1 ある著作が著作物と認められるためには、それが思想又は感情を創作的に表現したものであることが必要であり(著作権法二条一項一号)、誰が著作しても同様の表現となるようなありふれた表現のものは、創作性を欠き著作物とは認められない。
本件記事は、いずれも、休刊又は廃刊となった雑誌の最終号において、休廃刊に際し出版元等の会社やその編集部、編集長等から読者宛に書かれたいわば挨拶文であるから、このような性格からすれば、少なくとも当該雑誌は今号限りで休刊又は廃刊となる旨の告知、読者等に対する感謝の念あるいはお詫びの表明、休刊又は廃刊となるのは残念である旨の感情の表明が本件記事の内容となることは常識上当然であり、また、当該雑誌のこれまでの編集方針の骨子、休廃刊後の再発行や新雑誌発行等の予定の説明をすること、同社の関連雑誌を引き続き愛読してほしい旨要望することも営業上当然のことであるから、これら五つの内容をありふれた表現で記述しているにすぎないものは、創作性を欠くものとして著作物であると認めることはできない。
2 右観点からすると、本件記事4、8、21、22、32、35及び42(別紙目録(二)の1ー4、2ー3、4ー2、4ー3、6ー5、7ー2及び10ー1)は、いずれも短い文で構成され、その内容も休廃刊の告知に加え、読者に対する感謝(4、8、21、32、35及び42の記事)、再発行予定の表明(4、21、22及び35の記事)あるいは、同社の関連雑誌を引き続き愛読してほしい旨の要望(4の記事)にすぎず、その表現は、日頃よく用いられる表現、ありふれた言い回しにとどまっているものと認められ、これらの記事に創作性を認めることはできない。
3 他方、右七点を除くその他の本件記事については、執筆者の個性がそれなりに反映された表現として大なり小なり創作性を備えているものと解され、著作物であると認められる。"
東京地判平成7・12・18知的裁集27-4-787(ラストメッセージin最終号事件)
被告Yは、休刊又は廃刊になった各雑誌の最終号に掲載される記事(たとえば「読者の皆様へ:長年のご愛読ありがとうございました」など)を年ごとに まとめて印刷、出版した書籍を発行・販売していたところ、Xらが発行又は出版していた雑誌の記事も含まれていたため、XらがYに対して著作権侵害を理由に 差止めおよび損害賠償を求めた事案。
上記理由により、原告らの記事の一部について創作性を否定し、そもそも著作物とはならないとした(一部棄却)。他方、同じ休廃刊記事のなかでも創作性を認め、著作権侵害を肯定したものもあった(一部容認)。